第七章 妖の夏



 七夕は坂道を一息に駆け抜けて、学校へと到着した。
「こりゃあ……八斗のヤロウ、とんでもねぇことしやがって」
 蒼く光る蜘蛛糸の結界が、学校の敷地を全て覆い尽くしていた。本職の八斗が張った結
界は、所詮門外漢である七夕のものよりもずっと強靭でヴァリエーションに富んでいる。
 しかし……こんなに巨大なものまで作り出せるとは。
 正直、今まで弟を舐めすぎていたかもしれない。
 感心している場合ではなかった。今に限っては、この結界は行く手を阻む障害でしかな
い。七夕は迷わず校門に駆け寄って、蛛糸結界の一部を『切断』する。
 結界が損傷を自動修復している隙に、七夕はまんまと結界の内側に潜り込むことに成功
していた。


「う……」
 結界の中は、確かに封じるに足る地獄だった。
 いずこからか腐臭が漂い、大気は濃密な瘴気によって混濁している。封印を解除された
九葉が撒き散らしたものに違いないが、彼女独特の燃え盛る炎のような妖気はどこにも感
じない。
 同じく八斗の妖気も、そして操の妖気も感じなかった。
 もう戦闘は終わってしまったのだろうか……湧き上がる嫌な予感に胸を焦がしつつ、七
夕は特に瘴気が濃くなっている方向を目指して足を運んだ。


 校舎裏は、さながら台風が通過した後のような有様だった。
 樹木は無残に薙ぎ倒され、校舎の一角は徹底的に粉砕されている。
 さらには元が何だったかも窺い知れない程に引き裂かれた腐肉や、蛛形類と思しき屍骸
がそこら中に散乱していた。
 この暴れ方は九葉だ。ここで何らかの戦闘行為が行われたのは、もう間違いない。
 七夕は誘うように開け放たれた扉から、校舎内に足を踏み入れた。


 リノリウムの床に足音を響かせて七夕は駆ける。本来ならば、敵に自分から居場所を教
えるような真似は下策でしかない。七夕のように身体能力に劣る者であればなおさらだ。
 しかし今はリスクを考慮している時間すらも惜しかった。一刻も早く九葉たちを見つけ
てやらなければ、取り返しのつかないことになる。そんな確信じみた予感があるのだ。
 僅かに薫る血臭を手がかりに七夕は階段を急ぎ上った。
 そこに。
「なっ……深雲先輩!?」
 制服姿の深雲陽香が、四肢を白い縄のようなもので束縛されて、廊下に転がっていた。
 蜘蛛の糸をより合わせて作った縄。縺楽の連中が使う束縛術によく似ている。
「お、おい! しっかりしろよ!」
 何でこんなところに彼女がいるのか。答えは明白だった。あの料理は陽香が作ったもの
だと恭二は言っていた。彼女は獅条家からの帰り道で食人鬼に捕獲されたに違いない。
 悲壮に青褪めて脈を取った七夕は規則的に脈打つ血流を感じ、安堵の溜息を吐いた。
 彼女はただ気絶しているだけで、命に別状はないようだ。
 これで――もしも。彼女が死んでいたなら、七夕は一生自分を許せなかっただろう。
「よかった……」
 堪え切れなかった分の涙を拭い、七夕は手際よく縄を『切断』し陽香を抱え上げた。
 九葉たちも心配だったが、こんな高密度の瘴気の中にいては純粋な人間である陽香には
命取りになりかねない。
 まずは彼女を安全な場所に運ばなくてはならなかった。


「と、悪ぃな先輩。そういうわけにもいかなくなっちまった。もう少し辛抱してくれな」
 廊下の薄闇の先から、隻眼王が現れた。正気を失っていると聞いていたが、七夕を見る
あの憎悪に燃える隻眼はかつてのままである。
「ほう、随分手酷くやられたみたいじゃねぇか」
 妖気を感じなかった理由が分かった。隻眼王の妖力は、八斗お得意の『霊楔』によって
根こそぎ封印されているようだ。月の光を浴びているというのに、目の前の獣人からはも
う何の脅威も感じなかった。封印の楔……一つ、閃いたことがあった。
「おい、てめえ。九葉と八斗はどうした」
「…………」
 隻眼王は答えない。
「チッ、だんまりかよ。まぁいい、あんたにゃ謝らなきゃならんことがある。……殺して
やるつったけどな、ありゃ保留にしてくれ。それどころじゃなくなっちまった」
 七夕は片手で陽香を抱え直す。空いた片腕で尻のポケットから白紙の短冊を三枚と、油
性マジックを取り出した。器用に口でキャップを開けて、さらさらと文字を記入していく。
 正規の符術師が見たら卒倒するに違いないが、これが七夕の呪符作成の過程であった。
 白紙に刻まれた文字はそれぞれ、
『土』
『土』
『寸』
 三文字が組み合わさって意味を成し、『字転』の術式が起動する。
 果たして七夕の手の内に現れたものは、八斗が用いるものと同じ『霊楔』である。
 蒼光を帯びた封印具を見るや隻眼王は大いに怯み、グルグルと低く唸りながら後ずさっ
た。余程これに痛い目に遭わされたのだろう。
「シ、ジョウ……獅条ォォッ!」
「隻眼王、てめえにゃもう用はねえ――お呼びじゃねえんだよッ!」
 念を込めて投じられた『霊楔』は隻眼王の額に突き刺さり、吸い込まれるように埋没し
て消えた。
「グガァァァッ!」
 異変は二段階に分かれて訪れた。隻眼王は、まず痛みに悶え苦しむように叫んだ。妙だ
った。この『霊楔』は、こんな苦痛を与えるようなものではない筈なのに。
 続いて苦しみ方が変化した。
「う、あぁぁぁ……」
 隻眼王は頭を押さえて蹲り、がくがくと全身を震わせている。
「どうだ……?」
 七夕が霊楔に込めた念は『犬神操を操っている要素を封じる』というものである。曖昧
で範囲の広い術式はそれだけ効果も薄まるが、今は一時的にでも操に正気を取り戻させ、
彼女の口から真相を聞きだすことが肝要だった。
 隻眼王は食人鬼ではなく、他にこいつを操っている黒幕がいるというのだから。
 あの時、七夕を倒した隻眼王は操の意識に邪魔をされてその場から退き、その後に本物
の食人鬼にやられて傀儡にされたのだろう。
 あの隻眼王を倒すとは、余程に強力な変異なのか。
「ぐっ、獅条……」
 痙攣が治まり、顔を上げた女の顔には正気の色が見て取れた。
「おまえ、犬神か?」
「馬っ鹿野郎……遅いんだよ! 何でもっと早く来ないんだグズ!」
 怒鳴り付けたいのに、声が掠れて大声が出ない様子だった。口が悪すぎて隻眼王とあん
まり変わらない気もするが、感覚で分かる。このむかつく女は犬神操以外の何者でもない。
「悪いな、誰かさんの爪が痛かったもんでよ。さぁ、聞かせてもらうぜ。この事件の真相
ってヤツをな」
「それは……があっ!」
 言い差した操の背中を、闇の中から飛来した霊楔が貫いた。ただでさえ弱っている彼女
にさらに封印を加えたりしたら……最悪、不随意器官の機能が止まって死にかねない。
 非道の所業をやってのけた人影は、廊下の角から姿を現した。
 言うまでもなく霊楔を扱えるのは八斗しかいない。だが、あの優しい弟がこんな顔をす
ることがあるのか?
 弱者を嬲り快楽を得る、見たこともないサディスティックな微笑で八斗は言う。


「何やってるのさ、にいさん。早く止めを刺しなよ、そいつが食人鬼――にいさんを酷い
目に遭わせた変異だろう?」
「封印を抜け、八斗。こいつは……違ぇよ」
 かつん、と背後、七夕がやってきた階段の方向から気配を感じた。
「違いませんよ、兄さん。さぁ、こんなつまらない事件は終わらせてしまいましょう?
 兄さんがやらないなら、私がやるだけです」
 階段を上がってきたのは九葉だった。ぼろぼろに切り裂かれた制服姿の彼女は、総身に
鬼気を纏い、黒い瘴気を噴出させている。
「九葉、話を聞け。犬神操は操られているだけだ。食人鬼は他にいる」
「いいえ。いませんよ、そんな人。
 食人鬼は犬神操で、彼女が退治されればこの事件は終わるんです」
「九葉……?」
 気付けば、まるで二人に挟み撃ちにされたような妙な立ち位置に七夕はいる。
 しかも今まで、彼らはどうしてわざわざ妖気を絶って姿を消していたのか?
「――そういうことかよ」
 得心した七夕は陽香を足元に横たえた。陽香を手元から離すのは心配だったが、片手が
塞がっていては到底この二人を同時に相手取ることはできない。
「あら。何のつもりですか、兄さん」
「おまえは九葉じゃねえ」
 九葉と同じ姿をした女は、瞳孔が縦に裂けた鬼の瞳で睨みつけてくる。
 八斗は嘲るように両手を広げた。
「はは、何言ってんの?
 困ったな、どうやらにいさんは病み上がりで惚けてるらしいや」
「そしておまえも八斗じゃねえ。覚えとけよ食人鬼。九葉はともかく、俺の弟はなぁ……
 こんな腐った笑い方をするような奴じゃあねぇんだよッ!」
 操と同じように、八斗と九葉が食人鬼の傀儡にされていることはもう明らかだった。
 こんな――こんな奴が八斗である筈がない。


 七夕の喝を受けた八斗は、虫けらでも見るような醒めた眼になった。
「……あっそう、いいよ別に。で、それでどうするのさにいさん。仮に僕たちが操られて
いるとして、だ。僕たち二人を相手に一人でどうしようっていうの? まさか――」
「決まってんだろ。今すぐブッ飛ばして眼ぇ醒ましてやんぜ!」
 八斗に最後まで言葉を綴らせることなく、七夕は床を蹴って弟に踊りかかっていた。
 渾身の右拳はしかし、突如八斗の足元から出現した光糸の結界によって容易く阻まれる。
 勝ち誇ったように口端を歪める八斗に向かって、七夕は同じように笑って見せた。


「おまえはいつもそうやって、勝ったと思った瞬間に油断する」
 結界に密着した拳が開かれ、そこから炎が発生した。七夕の手の中には『火』の呪符が
二枚握り込まれていたのである。
「何ィ!?」
 八斗を防護する結界はたちまち業火に包まれた。無論、灼熱が八斗を焼くことはないも
のの、炎の目隠しによって視界を完全に塞がれてしまう。
 八斗が霊楔を投げた時にはすでに、アクロバティックに宙を舞っていた七夕は天井を蹴
って急降下しており、背後に着地するまでの一刹那で蛛糸結界を『切り』捨ててのけた。
 振り返った八斗と、近接距離で視線が交差する。身体能力が獅条最弱である八斗にここ
からの起死回生が残されている筈もなく、成す術もなく鳩尾に膝を叩き込まれ一撃の下に
床に沈んだ。


 この兄妹に連携されれば勝ち目はない。先制攻撃でまず身体能力の低い八斗を行動不能
にしてしまうことが僅かな勝利の可能性を開く前提条件だった。簡単に倒したように見え
てその実、一手仕損じればそれで終わっていた危うい賭け。紙一重の勝利である。
 八斗を倒してもまだ鬼と化した九葉が残っている。
 一髪千鈞を引く状況は依然変わらない。九葉が状況を把握し、突撃してくるまでの一秒
にも満たない僅かな時間で、彼女への対抗策を用意しなければならなかった。
 七夕には鬼の動きを捉えることは出来ない。しかし長年組んできた妹の行動パターンを
予測することならば容易だった。九葉は間違いなく、小細工なしに真正面から攻撃を繰り
出してくる。結界を張ろうが罠を張ろうが、両の拳だけで強引に突破してのけるだろう。
 単純で読み易い攻め手だが、九葉の異常な身体能力を鑑みれば十二分に必殺である。


 七夕は胸元から新たな呪符を取り出して、盾にするように前へ突き出した。
 超高速で迫る打撃を『点』で予測しなければ、この戦術は成功しない。
 あまりにも分の悪い賭けだったが――悪運の女神が味方したのか、九葉の拳は七夕が翳
した呪符を直撃した。
 刻まれた文字は『反』
 鬼の剛力で殴りつけた衝撃を余すところなく『反射』されて、九葉は教室の壁を破壊し
ながら物凄い勢いで吹き飛んでいった。
「……おっかねえな、そんな威力で殴ったらお兄ちゃん跡形も残らねえぞ?」
『反』は効果範囲が呪符面積分しかなく、そのうえ持続時間は一秒程度しかない。
 肌が粟立つのをごまかすように、七夕は軽口を叩いた。


 急ぎ教室内に踏み込むと、九葉は壁に上半身を減り込ませて仰向けに倒れていた。
 すぐに再生すると分かっていても、妹を叩きのめすのはあまり気分のいいものではない。
「チッ……」
 苦々しく舌を打って『止』の符を続けざまに三枚投じ、九葉に貼り付けると、七夕は再
び白紙の短冊を取り出した。
 動きを封じている間に『霊楔』を撃ち込んで、正気に戻してやろうと思ったのだ。
「おい」
 二枚目の『土』を書き終えたところで七夕は『それ』に気付く。
 驚愕のあまり、唖然と下顎を落としてしまった。両目は信じられないものを見るように、
大きく見開かれている。
 実際、信じられなかった。
 対象を停止させる呪いを三重に施されて、それでも立ち上がってくるなんて――
「馬っ……!」
 驚いている場合でなかった。筆の速度を限界まで加速して、最後の一枚を書き上げる。
 九葉が力を振り絞って七夕に飛び掛るのと、具現した霊楔が投じられるのはまったく同
時だった。
 九葉は空中で額に霊楔を受け、憑物が落ちたように意識を取り戻したものの――突進の
勢いは緩むことなく七夕に体当たりする形となった。
 二人は絡み合ったまま廊下を転がっていく。
 ようやく勢いが緩み止まった時には、九葉は兄に庇われるように抱きすくめられていた。
「よぅ」
「兄、さん? どうして、ここに……」
「それはだなぁ」
 妹の顔を間近に見つめ、七夕は言ってやる。
「俺がおまえの兄貴だからだ。……兄貴ってのは、そういうもんだろ」
「……馬鹿……格好付けすぎですよ……」
 力なくも微笑して、九葉は意識を失った。
 七夕は今の一件で痛めた肋骨を庇いながら、ゆっくりと立ち上がる。九葉を床に寝かせ
て、意識のない妹に、へっと微笑して見せた。
 こいつを助けるために受けた傷なら、痛みすらも誇らしい。
 そう、兄妹とはそういうものなのだ。たとえ同じ腹から生まれたわけではないとしても。
「おい犬神、生きてるか?」
 一息吐いて振り返ると、うつ伏せに倒れている操が首だけを起こしていた。息は荒く、
相当苦しそうだが……今のところ無事のようである。
「獅条……」
「何てツラしてやがる。おまえまさか、俺が弟や妹に負けるとでも思ってたんじゃあるめ
えな。馬鹿いえよ、こいつらと喧嘩して負けちゃあ兄貴の立場がないってもんだぜ」
 冗談めかして笑った七夕だが、この勝利は半分が奇跡のようなものだ。
 勝因の四分の一は、八斗と九葉が『挟み撃ち』をしてきたことにある。前衛である九葉
が後衛である八斗を護れない位置に陣取るなど、本来の二人であればありえない愚策。
 これは戦場の定石に疎い第三者の意思が介入していることを示唆していた。
 七夕の実力が占めているのは勝因のうち、四分の一程度。
 勿論、そんな格好悪いことはとても言えない。ここは操を元気付けるために、ハッタリ
でも強がっておくべきだろう。
「そっか……本当に強いんだな、おまえ」
「まぁ、な」
 七夕の言を鵜呑みにした操は幾分安心した様子で、苦痛混じりの涙目で見上げてきた。
 照れ隠しに頬を掻いて、七夕は問いかける。
「そら、何があったか言ってみろよ。おまえらを操ってた食人鬼はどこにいった?」
 操の身体を抱えようとしゃがみ込んだ七夕に、逼迫した声が掛けられる。
「獅条、油断するな……!」
「安心しろ、この周りには俺たち以外の気配は感じねえ。
 危険域まで近づかれりゃ気付くさ」
 自慢の傀儡を破られて、食人鬼は撤退したのだろう。四人を抱えて帰るのは病み上がり
の身には堪えるが、もうこの周囲に危険な奴はいない。そんなことは七夕以上に感覚の鋭
い操には自明だろうに。それとも五感まで封じられているのだろうか。
「違う、そうじゃないんだ……! 食人鬼は――」
 操の掠れた叫びに反応して振り返った時は遅かった。
 ……警戒を怠ったわけではない。気配が一切感じられずとも、七夕は周囲数十メートル
のいずこから攻撃を受けようと速やかに反撃できるだけの注意を払っていた。
 完全に姿や気配を眩ませたまま、標的に忍び寄り殺す――そういった系統の能力を持つ
妖魔がいることも、よく知っていたからだ。
 だがこの角度、この場所からの攻撃だけはありえなかった。
 予測できる道理などある筈がなかった。
 三階廊下全域に渡って張り巡らせた警戒領域の中にあって、唯一の死角。
 絶対にそこ(、、)からだけは攻撃を受けることなどないと、無意識のうちに注意の外に追いや
っていた正にその一点から――黒い糸が放たれたのだ。
 煌く蜘蛛糸はたちまち七夕の全身に絡みつき、優しく抱擁するように四肢を束縛する。


 静かに佇立する食人鬼は、たった今いずこからか出現したのではない。
 最初からそこにいただけだ(、、、、、、、、、、、、)
 七夕は口を笑みの形に引き攣らせて痙攣した。あまりにも冗談の度が過ぎて、笑うこと
もできやしない。
 頭のどこか大切な場所が麻痺していた。目前の状況にまるで現実感がない。壊れた薄笑
みを浮かべながら首を動かして、身体に巻き付いている艶やかに輝く糸を見る。
 見覚えのある綺麗な色だった。
 そう、彼女の髪と同じ……絹を漆黒の闇で染め抜いたような。


「――――あぁ」
 風なんて少しも吹いていないのに、黒絹の長髪がざあざあと流れている。
 妖糸の群れは髪の先から生じていた。ぞっとするような燐光を帯びた魔性の蛛糸。
 幽霊のように赤みのない透き通った肌は、死を侍らせていた一年前と同じ――いや、よ
り白く玲瓏に、負の生命力に満ち溢れている。
 たおやかな指先には冷たく輝く鉤爪が生え揃い、紅く濡れた口唇からは……人喰いの牙
が覗いていた。
 月の妖光が差し込む窓際に、人の姿を喪失した食人鬼――深雲陽香は立っている。
 瘴気に棚引く射干玉の髪は美しく、清廉な黒百合のようだった。